秋の好きな記憶たち

  • レアですよ。
    あ、そういえば、この時良かったよね。 そういう記憶たちを詰め込みます。気ままにね。

素材集

子ども

コンビニにて。

コンビニで小学生くらいの兄弟に会った。
見たことのある子どもだったので、うちの学校の子どもだとすぐにわかった。

弟の方が、小さな声で
「お兄ちゃん、あの人、見たことあるよ。」と言った。
お兄ちゃんは
「あぁ、あの人は三階に住んでる人だよ。」と言った。



・・・・住んでないから!

自己肯定感

今日は研修で自己肯定感の低い子どもの対応について学んだ。
学校だけではどうのもならない部分も多いため
家庭(とくに母親)に対する関わりも重要になってくる。

最近は高学年を担任することが多いため
自分は愛されている,認められているという感情を持てないまま育ち
思春期に入って突然荒れる場面に出くわすことが多い。

Maslowの欲求階層説にあるように
1.生理的欲求
2.安全と安定の欲求
3.所属の愛の欲求・・・とピラミッドになっているが
2の安全と安定の欲求さえも満たれぬまま成長してしまうため
そこの穴を埋めるのは容易じゃない。
とにかく学校だけでは不可能なのだ。

先は長いけれど
地道に活動を続けるしかないなと思う。
一人でも多くの子どもが
安定した気持ちでこれから先を生きていくために。


ある男の子がよく言うセリフ。
「おれなんて一個もいいとこないし。」

わたしはこの子に
たくさんたくさんいいところがあるのを知っている。

どうやって知らせるかじゃない。
どうやって感じさせるかだと思う。

説明不足。

運動会の作文を書いた。

約束のひとつに「 」を使って,会話文を入れること,というのがあった。

会話文の書き方はもうとっくの昔に習っているはずだ。

 

「かぎかっこを使って,会話文を入れることね。」

「どこに?」

「どこにって,運動会の途中に誰かとお話したでしょ?」

「うんしたよ。」

「そのお話ししたところだよ。」

「かぎかっこ書いてから?」

「そう。かぎかっこ書いてから。」

「会話文?」

「そう。会話文。」

 

 

その子の作文にはこう書いてあった。

 

~略~

お昼になってお弁当を食べに行きました。

お弁当を食べていたら,お父さんが

「会話文。」

と言いました。ぼくはとてもうれしかったです。

 

 

 

もっとちゃんと説明すればよかった…。

お母さんのために。

「先生,離婚って知ってる?」

「知ってるよ。」

「うちのお母さんね,離婚したんだ。だからお父さんいないんだよね。」

「うん。」

「で,昼と夜に2つ仕事してるから,ちょっと大変なんだ。」

「うんうん。」

「朝帰ってきてね,ちょっとだけ寝て,それですぐにまた仕事に行くの。」

「うん。それは大変だねぇ。」

「だから,今日配られた耳鼻科検診の紙ね,自分で書きたいから,漢字の読み方教えてください。」

運動会の朝の告白。

昨日は運動会だった。

ずっと毎日遅くまで仕事をしていたし

昼間もたくさん運動会練習をやっていたので

疲れていたせいだと思う

前日からひどい頭痛がした。

 

クラスでも1番やんちゃなKくんが突然近づいてきて

「先生,今日元気ないの?」と聞いたのでびっくりした。

彼は学校でもちょっとした有名人だからだ。

1年生から勝手気ままに暴れまくり,

友達にけがをさせ,

注意する先生に暴言を吐いて蹴り,

授業中に立ち歩き,

要注意だといわれていた子だ。

 

そのKくんがわたしの元気のなさに気づいて配するなんて意外だった。

「元気あるんだけどね,なんかちょっと頭が痛いの。だから薬のんだんだよ。」と言ったら,

彼はそのあとずっとずっとわたしの頭痛を気にしてくれた。

すごくびっくりした。

 

「先生,治った?」

「少し治ったよ。」

「じゃあちょっと痛い?」

「ちょっとだけね。でも治るよ。」

「ふうん。」

夕方に座席取りがあって,彼はお父さんと一緒にグラウンドに来ていた。

わたしを見つけるなり走ってきて,また聞いた。

「先生,頭痛治った?」

「え? ああ!治ったよ。薬がきいたんだわ。心配しなくてもいいよ。」

「ふうん。明日くる?」

「来るよ。治ったからね。」

「ふうん。・・・・・・・スイカあげるか?」

「スイカ?」

「明日ね,お母さんがスイカ入れてあげるって言ったから。」

「いいね!でも先生たちは職員室で食べるし,先生にスイカをあげにきたら,Kくんが食べる時間がなくなるから,運動会の日は無理だと思うよ。遠足の日に,スイカ入ってたらちょうだい。」

「うん。わかった。」

 

運動会当日。 彼は,朝わたしを見かけるなり走ってきて,また聞いた。

「先生頭痛治った?」

「治ったよ。」

「薬飲んだから?」

「そうかもしれないね。今日は元気だよ。」

「ふうん。」

「さぁ,お外に行こう。」

「うん・・・・・先生,あのさぁ。」

「なあに?」

「ぼくね,先生心配だったさ。」

「うんうん。ごめんごめん。Kが一番心配してくれたよ。何回も聞いてくれたもんね。」

「なんでかっていうとー」

「うん。」

「先生が休むかもしれないって思ったしさー」

「うん。そっか。」

「先生が一番好きだからー」

「あら!嬉しいわ。」

「一緒に運動会やりたかったんだよ。」

「そっかそっか。先生も一緒にやりたかったから,治ってよかったよ。」

 

すると彼は突然わたしの腕を引っ張って「耳貸して。」と小声で言った。

 

みんなグラウンドに椅子を持って出て行っていたし

Kくんもわたしも早く行かないとならない時間だった。

でも,こんな表情をする彼を見たことはなかったので,彼がなにを言うのか聞いてみたかった。

「なに?」 わたしも小声で聞き返した。

彼は照れながら耳元で

「ぼくがいい子にしてたら,ずっと転勤しない?」と聞いた。

子どもから合格ハンコをもらうには。

今年は4年生の担任になった。

3年生のとき,男の子が元気すぎて,若い女の先生が手を焼いていたので

今年は若くない女の先生にしてみたようだ。

元気な男の子はたしかに6人ほどいたが,

どの子もやっぱり9歳で,

『せんせー,せんせー,ぼくの話きいてよー』症候群みたいなものだった。

もちろんそんな症候群はないんだけれど,

とにかく6人が6人とも,そう言いたくなるほどわたしにべったりなのだ。

「せんせーぼくね,今日公文なんだよ…」「せんせー,せんせー,ぼく先生のこと知ってる!だってね,ぼくね,おねえちゃんがさ…」「せんせー,ちょっとぼく話してるんだって,お前あっちいけ。せんせーって!聞いて。あのね,ラーメン好き?おいしいラーメンね…」「せんせー,みてこれ。ぼくサッカーやってるんだよね。せんせーって!この靴みて!あのね…」

一度に6人のやんちゃ坊主くんたちが「聞いて聞いて!」「お前どけろ!」とやるもんだから,そこでもう喧嘩になりそうになる。

先生争奪戦だ。

仕方ないから左から順番に聞くことにして,中休み全部使って聞き終わった。

不思議なもので最初のうちにいいだけ聞いてあげると,子どもはだんだん待てるようになる。

「この人は聞いてくれる人だ。」という安心感がそうさせるのではないかと思う。

本当に忙しくて職員室に戻らないとならない時に

「○○しないとならないからさ,ちょっと待っててくれる?後ででもいい?」と言うと

「わかった!」とにっこり笑って

「お~い!グラウンド行こうぜ!」っていいながら元気に外に飛び出していく。

後から必ず「ごめんごめん,さっきのなんだったの?」と聞くのを忘れてはならない。

「あ!うんとねーーー」って話してくれる。

もう一つ大切なのは,

身体のかがめて,一度手をとめて,しっかりと目をみて話を聞いてあげることだ。

ただそれだけ,

ただそれだけで子どもは優しいから先生に合格ハンコをくれる。

金曜日

一番やんちゃな子が教室から出ていくときに

後ろのドアのところでくるりと振り返ってこう言った。

「せんせー!さよーならー!」

「はい,さよーならー。」

「せんせー!月曜日も学校に来るから,先生もきてねー!」

どうやらこの子には合格ハンコをもらえたようだ。

考えた末に

5年生の算数のテストに,

さとしさんの家から学校までと,駅まではどちらがどれだけ遠いでしょうか…というような問題があった。

この前「なんで時間をわざわざ分数で言わないとなんないのさっ!」って怒った女の子も,もがき苦しみながらテストを受けていたが,そこだけは「これはたぶんあってるな。」と自信がありそうだった。

テスト用紙には

(         )のほうが(         )遠い。

というように穴埋め式になっていた。

(   駅   )のほうが(  ○○km  )遠い。

のように書くのだ。

テストが終わって○つけをしていたら,その子の答案には

( さとしの家から )のほうが(  学校  )遠い。

となっていた。

算数のテストなのに計算をした形跡は一切なかった。

「これ,どうやって学校のほうが遠いってわかったの!?」と聞くと

「え?・・・・見た目・・・・。」と言う。

よくよく見ると,テストにはさとしさんらしき人物と学校と駅の絵が描かれていたのだ。

「ちょっと遠いじゃん。ちゃんと指ではかったもん。」

やれやれ。

放課後残して教えてあげたんだけどねぇ(笑)

お母さんはいないけど

ある男の子がスキー学習の時にお弁当を見せながら言った。

「せんせーあのねー,うちのお母さん出て行ったのさ。けっこう前にね。それでね,お父さんがお弁当作ってくれるのさ。こういう日にね。遠足とかも。それでね,すごいんだよ。ちょっとみて。こうやってぼくの好きなキャラクターとかの顔にしてくれるんだよ。これは海苔でぇ,これはウインナーを切ったやつね。お父さんがお弁当を作れないときはおばあちゃんが作ってくれるんだけどね,お父さんの作ったやつのほうがいいんだ。はっきりいって。おばあちゃんには言わないけどね。」

それはそれは可愛らしいお弁当だった。

「先生の作るお弁当より,ずっとかわいいし,ずっとおいしそうだし,愛情がたっぷりっていう感じね。」

本当にそう思った。

にっこり笑いながら彼は言った。

「だからね,お母さんがいなくてもいいんだ。」

告白

4年生が言った。

「先生,きのうね,わたし告白したの。」

「だれに?」

「好きな人に。」

「へぇ!!・・・・で?なんて言ってた?」

「うんとねぇ・・・・なんかねぇ・・・・大人になったらねって。」

「・・・・・・・・お・・・・・・・大人になったらなに!?どうなるの?」

「さぁ,そこまでは言わなかった。」

気になる。

非常に気になる。

4年生の言う「大人になったらね。」はなんなんだろう。

「大人になったらなんなのか楽しみねぇ。」と言ったら

「すっごい楽しみ!」と言った。

定規を折って。

5年生の男子が友達の定規で遊んでいたら

ペキンッと折れてしまった。

折られた方は「なにやってんのよーーーっ!」と大声で叫んだ。

周りはその声に驚いて「なしたの?」とぞろぞろ寄ってきた。

「なんで折ったの?」

「誰がやったの?」

「あーーーあ,知らないよ。」

「どーすんの?くっつくの?」

「弁償したほうがいんじゃねーの?」

「かわいそー。」

「なにやってんのよー。」

折ってしまった子は

定規を持ったままオロオロしていた。

「どうしたらいいと思う?」と尋ねると

「あやまる。」と言うので

「じゃ,あやまってみたら?」と言った。

「ごめんね。」と蚊の鳴くような声であやまった。

「えーーーいいけどーーー。どうすんのよ,これーーー。」

どうすんのよ,と言われ,彼はまたわたしを見上げた。

「どうしたらいいと思う?」

「ボンドでくっつけてみる。」

「そう。じゃ,やってみたら。」

休み時間ずっと,ボンドでくっつけようと試みていたが,やっぱりだめだった。

そんなことは,最初からわかっていた。

「くっつかなかった。」

ベタベタになった定規を持ってきてそう言った。

「そうかい,残念だね。じゃ,どうしたらいいと思う?」

「買って返そうかな。」

「お母さんにお願いするのかい?」

「うん。人のを折ったっていったら,たぶん買ってくれると思う。」

「そう。じゃ,そうやって言ってきたら?」

彼はベトベト定規を持っていって

「あのさ,ボンドでくっつかなかったから,買って返すから。」

定規を折ってから30分ほどたっていた。

「……うん……。」

最初の怒りはどこへやら。

30分間なんとか直そうとしていた彼の姿を見ていたせいか,

だんだんかわいそうになってきて,強く言えなくなったのだろう。

次の日,

定規を折ってしまった子に「買ってきたのかい?」と聞いてみると

「買わなくてもよくなった。」と言う。

「ふうん。なんで?」と聞くと,

「やっぱり,弁償しなくてもいいから,って電話がきたから。」と言った。

定規を折ったことによって

彼らはたくさんのことを学んだのだ。

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