秋の好きな記憶たち

  • レアですよ。
    あ、そういえば、この時良かったよね。 そういう記憶たちを詰め込みます。気ままにね。

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トンボさん ごめんね

「せんせい、みてこれ。」

Sくんは頭のもげたトンボを差し出した。

「あら!どうしたの!もげちゃったの?」

びっくりして聞くと、にやりとわらってこういった。

「ぼくがもいだの。でも見てて、これ、まだ動くんだよ。」

一年生のやんちゃくんに頭をもがれたトンボは、たしかにまだ動いていた。

「なんか、かわいそう。」

「・・・・・・いいんだよ。べつに。」

「そう?先生はかわいそうだなって思うよ。せっかく生まれてきて、広いお空を楽しく飛んでいたかもしれないよ。」

「・・・・・・・・でも、まだ死んでないよ。」

「でも、もうすぐ死んじゃうよきっと。」

「・・・・・・・・・・。」

「頭はさ、一度もいだら、もうはえてこないよ。」

「・・・・・・・・・ふうん。」

彼は口をとんがらがせてトンボを見ていた。

「どうする?」

「捨てる。」

「そっか。わかった。」

わたしは黙ってその場を去った。

学年で一番やんちゃで乱暴な子だけれど、きちんとお話すればわかってくれる子なのだ。今は自分のやってしまったことに引っ込みがつかなくなって困っているのだ。だって、もいだ頭はもう戻らないから。

二階の職員室前の廊下から、外に立っている彼の姿が見えた。

彼はしばらくトンボを見ていたが、突然足元に置いた。

捨てたのではなく、置いた。

それでも彼はそこを動かなかった。

何秒か見ていて、トンボが飛べないことを確認したのだろう。トンボをもう一度拾って近くにある花壇に行き、お花のそばにトンボを置いた。

それが彼のできる、精一杯のごめんねだった。

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