秋の好きな記憶たち

  • レアですよ。
    あ、そういえば、この時良かったよね。 そういう記憶たちを詰め込みます。気ままにね。

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エネルギーは100しかない。

Mちゃんはソファーに力なく腰掛けて言った。

「秋はいいよね。子どももいないから自由だし。先生だからお金もあるでしょう?そりゃ大変だと思うよ、先生だって。でも、なんか、うらやましいって思っちゃう。」

わたしは黙ってうんうんと頷いた。現実はどうかなんて問題ではない。彼女からみたらわたしはそう見えるのだ。

「わたしね、結婚しなきゃよかったかなって最近思うの。時々ね。・・・・ひどいと思うかもしれないけど、子どもも生まなきゃよかったかなって。」

わたしはまた黙って頷いた。

「だんなはね、悪い人ではないんだけど・・・・仕事も忙しいし、土日には趣味でストレスを発散させているところがあるから、あんまり手伝ってっていえなくて。

言えば時々やってくれるんだけど。できるだけ我慢しなきゃって思って我慢しちゃって。

でも我慢できなくなって、時々爆発しちゃう。

家のことと子どものことで一日ばたばた終わってさ、化粧もしないで、女は捨てた感じ。ちょっと一人にしてよって思う。旦那にも、ちょっとかわってよ!って。」

疲れ切っているんだな、と思った。もうへとへとなんだ。一人で頑張らないとって思って。

母親としての責任と妻としての役割をちゃんと果たそうと思えば思うほど、自分の時間なんてなくなってしまう。

これを長く続けると、母親と妻以外の自分がどんな自分だったかさえもわからなくなってしまうのだろう。

彼女はつづけた。

「こんな自分は本当の自分じゃない気がする。本当の自分に戻りたい。自分がなくなっちゃった感じがするの。」

学校にいても、こういうことを訴える若いお母さんが増えている。

わたしはとうとう口を開いた。

「本当の自分は、今そこに座っているMちゃんだと思うよ。他にMちゃんはいないよ。だから自分はいなくなんてなってない。ただ、今の自分の状況が辛すぎるんだと思うの。自分のエネルギーが100あったとしたら50を母として費やして、50を妻として費やしていたら自分のために費やすエネルギーなんて残っていないよね。」

「まったく残ってない。」

「工夫できるところ、ないかな。」

「工夫できるところねぇ。」

「100あるエネルギーを、母と妻で使い切ってしまうことは立派なように見えるけど、続かない気がするの。」

「そうなの。絶対続かない。このままじゃだめになると思う。」

「せめてさ、母として40、妻として30、自分に30くらいにならないかな。エネルギーをね、自分のために使うことに罪悪感を感じちゃだめよ。Mちゃん頑張り屋さんだから、全部子どもと旦那さんに費やしているけど、それはきついよ。

もしエネルギーが30くらい自分のために使えるなら、何がしたい?」

「うーんとーねー。」

彼女はにっこり笑って「ピザとって、好きなDVD観たいねぇ・・・一人でね。」と言った。

そして「さっき、ごめんね。秋のことを自由でいいよね、みたいなこと言っちゃって。なんにも知らないくせにね。」と付け加えた。

それから2時間、女二人で、どこをどうやって手を抜くかについて真剣に作戦を練った。

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